動物から見る美しさ

Last-modified: Thu, 23 Mar 2017 21:58:25 JST (2596d)
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投稿者:Soya

 美しさとは何でしょうか。
 数学なら過不足のないシンプルさかもしれません。文学や美術はあまり詳しくないのですが、多くの流派があるところを見るに、基準はひとつではなさそうですね。
 人間が美しいと感じる基準は多岐にわたります。では、動物の世界ではどうでしょうか。
 もちろん、種によって知覚できるものが違いますから、基準も様々でしょう。多くの哺乳類が色の違いに注意を払えないように、ラットが歌う求愛を我々が聞き取れないように、同じものを見聞きしても、見ている世界は異なるわけです。
しかし、種によって美の基準が違っていても、得られるメリットは似ているのではないでしょうか。
つまりですね。美しければモテるのです。生殖に有利なのです。別の種にモテても何のメリットもありません。ゆえに種によって「美しい状態」が違おうと何の問題もないわけです。
 これはもう、モテるやつほど美しいと定義してもいいのではないでしょうか。

 では、動物の世界ではどんなやつがモテるのでしょうか。
 1番シンプルなのは身体の大きさです。でかいやつがモテる、わかりやすくて素敵ですね。カバは口を大きく開けて比べ合います。コクホウジャクやツバメは尾羽が長いほどモテますし、ニホンジカは立派な角を持っているほど生殖に有利です。尤もシカについては、ツノの大きさそのものより数が重要らしいですが。
数もモテる基準になりえます。クジャクのメスは羽根の立派さを目玉の数で判断していると言われています。また、オクリバエの仲間やコアジサシ(鳥です)は、捕まえた餌をメスに渡して、その数や大きさで交尾できるかが決まります。稼げるやつがモテるんですね。まあ、ハエのオスは中々したたかで、獲物に糸を厚く巻いてカサ増ししたり、獲物が入ってない糸の包装だけ渡したりするものもいるのですが。口移しで餌を渡して求愛するフクロウを見習ってほしいですね。
 どうやらメスへのアピール要素は、オスの見た目そのものである必要はないようです。鳥の仲間には自分のからだ以外でアピールするものが多く、メスに餌を渡す求愛給餌が見られます。ニワシドリ(庭師鳥)の仲間のように、見せつけるためだけの「門」と「庭」をつくる大がかりな種もいます。
 つまり、「その種が注目する箇所をより派手にできる」というのがポイントなのでしょう。

 ところで、特定のポイントが派手な個体、モテる状態の異性を選ぶことは、どんな利点があるのでしょう。
 生殖の目的は自身の遺伝情報を後世に遺すことです。そのためには、なるべく生存に有利な遺伝情報を持つ個体をパートナーにしたい。ですが、そのことと立派なアピールポイントにどんな関係があるのでしょう。
モテる状態を維持するためには多くのエネルギーが必要です。生存に直接関係ないことにエネルギーを注げるのは、体力や時間に余裕がある個体だけです。実際、普段は赤いニワトリのトサカは、病気やケガをして弱っていると色艶を失ってしまいます。また、シカの角やクジャクの羽は派手であるほど生殖に有利な反面、敵から逃れるには不利になります。大きさや重さがあるぶん、敵に見つかりやすい上に速く走ることも難しいでしょう。ということは、角や翼などのアピールポイントが立派な個体ほど、生き残る能力が高いと考えることができます。巣をつくる種も同様に、あの派手な巣が敵に見つかっても上手く逃げたり隠れたりして生き延びられる術を持っているのでしょう。
 アピールポイントが立派な個体は、生存に関係ないことにエネルギーをかける余裕があり、生きる能力も高い優良物件なのです。だからモテるのです。

 この論をヒトに適用して考察したりもしたんですが、それはまた別の機会に。